生物の定義とドラえもんが生物ではない理由
最近、この話題をよく見るようになったので自分も突っ込んでみることにした。と言うか、あまりに的外れな生物の定義をしている人(そもそも問題を全く読んでない人)がいて、元生物学者志望だった私には我慢できなくなったと言ったところか。
実は記事の中段にご丁寧に生物の定義が出題に出されていると書いてある。まず問題(記事)読もうよって感じなんですよね。しかし、さすが名門麻布中学と言ったところか。生物の定義を知らなくても(と言うか日本でも上位に入る小学6年生でも知らないんじゃないか?)定義を与えて論理的に考えさせる問題になっている。これはほとんど生物学の問題ではなく、論理学の問題ですな。
10年ほど前になるが、高校の生物の授業で一番最初の小テストに出た問題が『生物とは何か?』だったことを未だに覚えている。ちなみに答えは生物の教科書の各項目の題名に沿ったことを何個か書いていれば正解(3つだったか?)。ちなみに今適当にググったところ、生物Iの教科書の項目は以下のような感じらしい。
第1部 生物体の構造と機能(細胞)
第2部 生殖と発生(生殖、発生)
第3部 遺 伝(遺伝子)
第4部 刺激の受容と反応
第5部 体液と恒常性(代謝、恒常性)
第6部 環境と植物の反応(代謝)
すなわち、
・細胞を持っている
・生殖(増殖)する
・遺伝子を持っている
・代謝する
・恒常性がある
と書けば正解(だったはず)。
さらにwikipedia先生によると、
すなわち、
・自己増殖能力→生殖(増殖)する
・エネルギー変換能力→代謝する
・恒常性(ホメオスタシス)維持能力→恒常性がある
・自己と外界との明確な隔離→細胞を持っている
と先程と比べ答えが一つ少ないが、やはり似たような解答になる。
ちなみにウィルスは人によって定義がまちまちであるため生物に含めたり、非生物だったりしますが、私は非生物派です(と言うかこっちの方が主流のはず)。ウィルスはいわゆる分類学上の界門綱目科屬種のさらに上のドメイン(領域)にすら入っていない(今後、生物の定義が変われば入る可能性もある。現在分けられているドメインは真核生物ドメイン、真正細菌ドメイン、古細菌ドメインでウィルスの分類からはじき出されるかたちで巨大核質DNAウイルスが第4のドメインとして入る可能性もある)。生物とウィルスの違いは代謝能力があるかないかである。
先程の話に戻ります。じゃあ、いったい答えはなんなんだと言うことになりますが
麻布中学校は「学校として問題の解答や意図の解説は一切しません。暗記内容を問うのではなく、考えさせる出題は毎年しています。今回もその一環です」とコメントした。
と、やはり後半に論理力を問う問題だと記述されている。
すなわち
・ドラえもんは自分と外界とを区別する境目をもたない
・ドラえもんは自身が成長したり、子をつくったりしない
・ドラえもんはエネルギーをたくわえたり、使ったりするしくみをもっていない
のいずれかを、論理的に説明できれば麻布中学的には正解になるわけだ。これは本当の意味で生物学的にあってようが間違っていようが、それは問題ではない。『文章中での生物の定義』にドラえもんが当てはまらなければいいだけの話だ。しかし、はっきり言ってむちゃくちゃ難しい。どこぞの大企業の入社試験並みに難しい。小学生の解けるのか、これ?
一見すれば、ドラえもんは自分と外界とを区別する境目をもってるし、自身が成長したり、子をつくったりしそうだし、エネルギーをたくわえたり、使ったりするしくみをもっている。
私としては、問題を解くためにドラえもんの生態やら構造図もほしかったところだけどな…。